映画『世界一キライなあなたに』ラストの景色が意味するもの|尊厳死と愛を描く名作
この記事は2021年5月に公開した記事を、2026年6月に加筆・修正したものです。
レビュー評価がとても高かったので観てみたのですが、久しぶりに心を大きく揺さぶられる映画に出会いました。
感動したという言葉だけでは表現しきれず、観終わった後はしばらく放心状態に…。
優しさ、切なさ、悲しさ、驚き、そして温かさ。さまざまな感情が次々と押し寄せ、胸の中で静かに混ざり合っていくような不思議な作品でした。
決して明るいテーマの映画ではありません。それなのに、なぜか最後には希望や愛の大切さを感じ、悲しいだけでは終わらない余韻が残ります。
今回ご紹介するのは、人生や愛する人との時間について深く考えさせられる感動のラブストーリーです。
運命の恋に落ちた二人。
もし愛する人が、半年後に自ら永遠の旅立ちを選ぼうとしていたら…
『世界一キライなあなたに』は、愛することの意味と人生の選択について問いかける、
心に残る素敵な作品です。
Me Before You - 世界一キライなあなたに
世界一キライなあなたに
(評価:★★★★★)
◆公開年:2016年
◆上映時間:110分(1時間50分)
◆監督:テア・シャーロック
◆製作国:アメリカ・イギリス合作映画
◆出演:
●サム・クラフリン(主演:ウィル・トレイナー)
●エミリア・クラーク(主演:ルイーザ・クラーク/“ルー”))
●ジャネット・マクティア(ウィルの母:カミーラ・トレイナー)
●チャールズ・ダンス (ウィルの父:スティーブン・トレイナー)
●スティーブン・ピーコック(ウィルの専属医者:ネイサン)
●マシュー・ルイス (ルーの恋人:パトリック)
原作は世界的ベストセラー小説
『世界一キライなあなたに』の原作は、イギリスの作家ジョジョ・モイーズによる恋愛小説『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』です。
2012年に発表されると大きな反響を呼び、世界40カ国以上で翻訳されました。累計発行部数は850万部を超え、多くの読者の心をつかんだ世界的ベストセラー作品です。
映画化されたことでさらに注目を集め、今なお多くの人に愛され続けています。
実話から着想を得た物語
『世界一キライなあなたに』は実話そのものではありません。
しかし、原作者のジョジョ・モイーズによると、本作はある実際の出来事から着想を得て執筆されたそうです。
モチーフとなったのは、事故によってほぼ全身麻痺となったイギリス人の元ラグビー選手の話です。彼はスイスの自殺幇助機関「ディグニタス」を利用し、自ら人生の最期を選択しました。
この出来事に深く心を動かされたジョジョ・モイーズは、「生きること」と「自分で人生を選ぶこと」をテーマに本作を書き上げました。そのため本作は単なる恋愛映画ではなく、尊厳死や人生の選択についても考えさせられる作品となっています。
あらすじ
舞台はイギリスののどかな田舎町。
主人公のルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)は、ユニークでお洒落なファッションが大好きな26歳の女の子。
ある日、お気に入りだったバイト先のカフェが突然閉店することに。家族を支えるために新たな職を探すルーが出会ったのは、6ヶ月限定の「介護」の仕事でした。
彼女が担当することになったのは、バイクの事故によって車椅子生活となり、生きる希望を失ってしまった超イケメン大富豪のウィル・トレイナー(サム・クラフリン)。
最初は心を閉ざし、ルーに冷たく当たるウィルでしたが、彼女の飾らない明るさと素直さに触れるうちに、頑なだった心が少しずつ溶かされていきます。やがて、お互いにとってかけがえのない存在へとおちていく2人。しかし、幸せな時間は長くは続きませんでした。
ルーは偶然知ってしまうのです。ウィルが自ら決めた「生きるためのタイムリミット」が、すぐそこまで迫っていることを――
★ネタばれですが、感動の名言
街に出かけたり、音楽会に行ったり、遠く旅をしたり、こんな二人はやがて恋に落ちる。ある夜の海辺、熱いキスのあとウィルが言う。
「君を縛りたくない。ボクのために普通の幸せを逃すなんて、いつか君が少しでも後悔するのを見たくない。妙な格好で歩き回る君や、裸の君を見ても何も出来ないなんて、どんなに抱きたいか君には分からない。このまま、生きられない」
(涙です。このセリフが感動です。)
「やめて! それ以上言わないで。勝手すぎるわ。想いをさらけ出したのに“ノー”を繰り返すだけ。その上、最悪の事態を見届けろなんて、どれほど残酷か。この仕事にもあなたにも出会わなければよかった」と言って去っていった。
ロケ地
映画ファンなら一度は訪れてみたいのが、作中に何度も登場する美しいお城。
主人公ウィルの邸宅として使われたのは、ウェールズに実在する「ペンブローク城」です。
【ペンブローク城のみどころ】
歴史的背景: 11世紀に建てられたノルマン様式の建物。イングランド王ヘンリー7世の生誕地としても有名です。
現在の様子: 20世紀初頭に美しく復元され、現在は一般公開されています。
お城からは、作中で2人が見つめていたものと同じ、息をのむような大パノラマが広がっています。映画の世界にそのまま迷い込んだような感動を、ぜひ現地で体感してみてください!
地図埋め込み
素敵な映画の感想
評判が良いのは知りつつも、「尊厳死」という重いテーマになんとなく構えてしまい、ずっと避けていたこの映画。プライムビデオで見られるようになったのを機に、高評価のレビューに背中を押されて「少しだけ…」と再生ボタンを押してみました。
結果・・・もっと早く観ればよかった!
想像していたような暗さは一切なく、画面に広がるのはどこまでも明るく優しい世界。美しい映像と素敵な音楽に一瞬で引き込まれ、気づけばあっという間にエンディングを迎えていました。
観終わった後は、いろんな感情が一気に押し寄せてきて、なぜか心地よい放心状態に……。
最後の結末を含め、観客に尊厳死や安楽死について問いかけるような深いテーマ性もありますが、決して「ただ悲しいだけの映画」ではありません。いろんな考え方があると思いますが、観た人の心を幸せと感動で満たしてくれる、胸がキュッと熱くなる最高の感涙ラブストーリーです。
誕生日のプレゼント…
映画の中で特に印象的だったのが、ルーの誕生日を巡る「2人の男性のセンスの差」です。ここ、恋愛あるあるが詰まりすぎていて大注目です!
❌ 7年付き合った元カレ:最悪のセンス
プレゼント: 自分の名前入りのハートのペンダント(ルーの個性を完全無視)
普段の行動: 自分の都合で旅行先を決める、男友達を旅行に連れてくる、彼女の観たい映画を却下する、誕生日会に遅刻する
⭕ 出会って数ヶ月のウィル:最高のセンス
プレゼント: ルーが幼い頃に愛用していた「黄色と黒のシマシマの蜂タイツ」
普段の行動: ルーの何気ないトークをしっかり記憶し、彼女が本当に喜ぶツボを掴んでいる
「毎日あれだけお洒落な服を着ているんだから、洋服が好きなことくらい気づいてよ!」と言いたくなる元カレの的外れっぷりに対して、ルーの心を100%理解しているウィル。男性が本当に女性を想っているかどうかは、こうした日々の何気ない観察眼に現れるんだな、と深く納得させられる名シーンです
ラストの窓を開けた時の景色…
ラストシーンで、個人的にとても心に残っているのが「窓を開けたときの景色」です。
途中で諦めず、父親の言葉をきっかけにスイスへと旅立ち、ウィルの最期に寄り添うことを決めたルー。病室でウィルが「窓を開けてほしい」と頼み、開いた窓の先を見つめる2人の表情が、本当に優しくて、感動に満ちていて、忘れられません。
劇中では、窓の外に広がる景色そのものは映し出されません。
あえて映さないからこそ、「きっと天国のように美しい、奇跡のような絶景だったんだろうな」と、観ているこちらの想像が膨らみます。皆さんの目には、あの窓の向こうにどんな景色が見えましたか?
尊厳死について考える…
ラストの結末を含め、この映画が投げかける「尊厳死」というテーマには、本当に様々な意見があります。
もし自分がウィルだったら、やはり同じ選択を選ぶかもしれない。
もし自分がルーだったら、どんなに苦しくても生きていてほしいと泣いてすがる。
母親の「生きてほしい」という願いも、父親の「息子の気持ちを考えてやれ」という葛藤も、すべてが本物の愛なんですよね。
誰の視点に立つかによって、見え方がガラリと変わる作品です。
何が正解で、何が間違いなのか。簡単に答えを出せない深いテーマだからこそ、観終わった後もずっと心に残り、私たちに問いかけ続けてくる名作なのだと感じます。
タイトル「Me Before You」
この作品、原題は『Me Before You(ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日)』といいます。
直訳すると「あなたの前の私」ですが、物語をふまえると「君に出会う前の私」という意味が込められているのかな、と感じました。
事故の後、絶望の中で生きることを諦めていたウィル。ですが、ルーに出会ってからは「朝、目が覚めるのが楽しみになった」と語るほど、彼の心は変わっていきました。
原題には、そんな彼の心の変化や、ルーへの深い感謝が込められているような気がしてなりません。
一方、日本の邦題は『世界一キライなあなたに』。
原題とはガラリと印象が変わりますが、物語の始まりである「最悪の出会い」をキャッチーに表現した、日本の視聴者にとっても分かりやすくて魅力的なタイトルですよね。
最後に…
映画の感想や解釈って、本当に人それぞれだと思います。
同じ作品を観ても、受け取るメッセージや結末への想いが人によって全く違うからこそ、映画は本当に面白いなと感じます。
私にとっての「良い映画」とは、心に強く訴えかけるものがあり、新しい視点をくれたり、観終わった後も「あのシーンはどういう意味だったんだろう?」と想像を膨らませてくれたりする作品です。見る人によって感じ方が違うので本当に面白い!
この映画を観た皆さんは、どんな感想を持ちましたか?
